• 奈良事典

奈良ゆかりの伝統色 5.柑子色(こうじいろ)

日本には古来たいせつにされてきた文化がたくさんあります。「色」もそのひとつ。人々は一日、あるいは一年(四季)のうちに緩やかに変容する色、すなわち自然界の色素を見て、色名を付け、歌に詠み、衣服を染めて、色の記憶をつむいできました。そうしたことは、文字に残る記録上、万葉の時代に始まったとされます。1300年前と今とでは見る景色はまるで違いますが、花びらや樹皮、葉や根、鉱物などから染め出した色は、古代の人々も現代の私たちも“同じ色”を見ているのではないでしょうか。そんな「日本の伝統色」から奈良ゆかりの色を紹介します。

「みかん」の鮮やかな色香、500円硬貨などのデザインにも採用

 

 

柑子色のコウジはタチバナの変種と言われており、その色は黄色く熟した実の色です。

奈良時代、秋を迎えて色落ちした野山に、「みかん」の原種であるタチバナの柑子色はとてもまぶしく映えたに違いありません。

 

平安京を造営した桓武天皇は、御所の庭に桜とタチバナを植えられ、「左近の桜」「右近の橘」として愛でられました。このこともあってか、古典文学では実よりも花木について触れられていることが多く、『古今和歌集』では「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」と花の芳香が印象的に詠まれています。

 

中世以降に家紋のモチーフにもなってきたタチバナは、昭和になると、常緑であることが文化の恒久性を表現するのにふさわしいとされて、文化勲章に花や葉がデザインされました。

また、500円玉の裏側、「500」の左右両側には、小さな実をつけた小枝があしらわれています。

 

同じく「コウジ」と読む色に「麹色」があります。こちらは米麹のような薄い赤みがかった灰黄色を言います。

 

 

奈良市三条大路にある、五條市の果実農家さんの直営店「堀内果実園」の紹介記事はコチラです。