• 奈良事典

奈良ゆかりの伝統色 8.卯の花色

日本には古来たいせつにされてきた文化がたくさんあります。「色」もそのひとつ。人々は一日、あるいは一年(四季)のうちに緩やかに変容する色、すなわち自然界の色素を見て、色名を付け、歌に詠み、衣服を染めて、色の記憶をつむいできました。そうしたことは、文字に残る記録上、万葉の時代に始まったとされます。1300年前と今とでは見る景色はまるで違いますが、花びらや樹皮、葉や根、鉱物などから染め出した色は、古代の人々も現代の私たちも“同じ色”を見ているのではないでしょうか。そんな「日本の伝統色」から奈良ゆかりの色を紹介します。

初夏の新緑に映える白

清楚な色が似あう豆腐の美味

 

卯月(4月)から皐月(5月)、明るい林縁で白い花を咲かせる木があります。卯の花(ウツギ)です。5枚の花弁に包まれたおしべの「やく」は淡い黄色をしています。

 

 

花の色を遠目に見ていたのでしょう。古人は、その白と黄が溶けあった「やや黄みがかった白色」を「卯の花色」としました。純白ではないということですね。

 

卯の花とその色は古くから親しまれていました。『万葉集』や『枕草子』にも登場します。万葉集には「五月山 卯の花月夜 霍公鳥 聞けども飽かず また鳴かぬかも」(大伴家持)などと詠まれ、初夏の月夜を美しく演出する色でもありました。

 

豆腐の搾りかす「おから」を「卯の花」と呼びますが、その清楚な白さを想像しているうちに、豆腐店を訪ねたくなりました。

 

訪ねたのは、五條市の老舗豆腐店。絹、木綿、揚げはそれぞれ数種類あり、ざるとうふ、黒胡麻とうふ、青大豆とうふ、だだちゃ豆とうふ、生ゆば、卯の花、豆乳スイーツなどが並んでいました。どれも、信頼できる契約栽培の国産大豆を使用しています。

 

店主に勧められるままに豆腐をそっと口に運ぶと、「お豆の甘みが!」と感動が広がりました。大豆の味がするというのはなんと贅沢なことでしょう。素材のチカラと職人のワザが成せる美味。色とともに味わいたくなる豆腐です。

 

 

冒頭に記したように、卯の花の木は「ウツギ(空木)」のことで、時々庭木として植わっていたり、販売されたりしているのを見かけます。多いのは、「白」よりも、「ピンク」をまとった花を咲かせる品種です。

 

初夏、白やピンク、あるいはそれらが織り交じった色の花を探してみましょう。豆腐を思い浮かべながら……