2025年は「巳年(みどし、へびどし)」です。十干十二支なら“成長と結実”の可能性が大きいとされる「乙巳(きのとみ、いっし)」に当たります。
皆さんは「へび」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
くねくねにゅるにゅるとした爬虫類としての蛇は、嫌悪忌避してしまう人が多数派かもしれませんが、十干十二支では、どの干支も景気のイイ言葉が並べられるとはいえ、両手を広げて歓迎したくなる存在です。
十干の「乙」は、木の陰のエネルギーを表し(陰陽五行説)、植物が成長し広がっていくような意味を持ちます。また、柔軟性や協調性の象徴ともされ、周囲との調和しながら、自分の目標に向かって進んでいく力を表しています。
十二支の「巳」は、蛇を表します。ネガティブなイメージを持たれる一方、神聖な生き物として豊穣や金運を司る神様として祀られることもあります。
また、生命力の強さ、表皮に傷があっても脱皮すると傷が消えることから、医療のシンボルともされ、WHO(世界保健機関)の紋章や救急車の車体にあるマークに「杖に巻きつく蛇」(アスクレピオスの杖)があしらわれています。
金運上昇を期待して、蛇革の財布を使う人もいますね。
蛇にあやかり、運気を上げ、成長と結実をもたらしてくれると信じてみたくなる2025年。奈良県内にある「へび」にまつわる初詣スポットを紹介します。
◎大神神社(桜井市)
大物主大神の化身である白蛇が棲むご神木
大神神社は、日本最古の神社とされ、ご神体は三輪山、ご祭神は国造りの神様「大物主大神(おおものぬしのおおかみ)」です。
その境内に「巳の神杉」がそびえています。
三輪の大物主大神の化身の白蛇が棲むことから名付けられたご神木です。
前には蛇の好物の卵が参拝者によってお供えされています。
『日本書紀』に大物主大神が蛇に姿を変えて顕現される記述があり、大神神社では蛇は「巳(み)いさん」と呼ばれ、崇められています。
へびがもつ様々な福徳を授かるには、大神神社「巳の神杉」は外せないスポットです。
◎新薬師寺(奈良市)
巳年の守護神に会える
(写真提供:新薬師寺)
光明皇后が夫である聖武天皇の病気平癒を願って天平19年(747年)に創建された古刹です。
奈良時代作のご本尊・薬師如来坐像(国宝)を十二神将立像(国宝)が円陣を組んで護衛しています。
十二神将のうち、右手に鉾(ほこ)を持ち、左手を腰に当てている因達羅(インダラ)大将(国宝:天平時代/国指定名:波夷羅)が巳年の守護神です。
新薬師寺では、2025年1月8日(水)15:00~、ご本尊にすべての人々の罪を悔い改める薬師悔過の法要を営む「初薬師(修正会)」が行われます。
◎安倍文殊院(桜井市)
巳年パンジージャンボ花絵「巳んなが笑顔に」!
(写真提供:安倍文殊院)
快慶作の文殊菩薩(国宝)をご本尊とする安倍文殊院で、恒例の干支をモチーフにした「パンジージャンボ花絵」が今年も登場しました。
2025年は巳年ということもあり、「巳(み)んなが笑顔に」との願いが込められています。
へびをかたどるように配置されたパンジーで「み」を表し、さらに、あらゆる魔除の呪符として使われている「五芒星」と、この時期頑張る受験生へのメッセージとして、葉牡丹で「合格」の文字も描いています。
2025年の乙巳年は、安倍文殊院の創建645年と同じ暦であり、安倍晴明公も巳年生まれ(921年)であることから、安倍文殊院と関わりが深い年です。
花絵は2025年4月末までの予定です。
◎杵築神社(平群町)
左腕にへびが巻きついた尊像
地元の氏神として信仰される杵築神社の社殿の右に観音堂があります。
通常開扉されていませんが、格子越しに本尊の木造聖観音坐像や木造深沙(じんじゃ)大将立像を拝観することができます。
深沙大将は玄奘三蔵が天竺への途上、流砂に難渋していたところ、その窮地から救い、守ってくれたと伝わります。
その左腕にご注目。白っぽい蛇が巻きついているのが見えます。
また、両膝にはゾウがいます。この珍しいお姿をした尊像は、南北朝期あるいは室町初期の造像だと推定されています(観音堂前の説明による。※神社前の神社概要説明看板には「室町後期作」とある)。
所在地:〒636-0937 奈良県生駒郡平群町福貴畑1396
◎信貴山朝護孫子寺(平群町)
信貴山山頂のお堂で新年最初の巳の日に法要が行われます。
信貴山(437m)の山頂に建つお堂「空鉢護法堂(空鉢堂)」。下の境内から九十九折の山道を約700m歩き、朱塗りの千本鳥居をくぐって至ります。
信貴山朝護孫子寺のご本尊・毘沙門天王の眷属である八大龍王の上首・難陀竜王(なんだりゅうおう)を祀っており、一願成就のご利益があるとされます。
毎年1月のその年最初の巳の日に、「新年巳の日大法要」が行われます。
2025年は1月12日(日)11:00~です。
◎脳天大神 龍王院(金峯山寺塔頭/吉野町)
丁重に弔った蛇を頭脳の守護神としてお祀りしています
金峯山寺初代管長の五條覚澄大僧正が、頭を割られた蛇に会い、経文を唱えて丁重に弔いました。その蛇が大僧正の夢枕に立ってお礼を言い、「頭の守護神として祀られたし」と霊言を伝えたという故事にちなみ、頭脳の守護神(頭病平癒、学力向上、入試合格など)として祀られ、信仰されています。
金峯山寺蔵王堂から西側へ急な階段を約450段くだったところに建ち、蛇にあやかった授与品などもあります。
所在地:〒639-3115 奈良県吉野郡吉野町吉野山2482