• 奈良事典

奈良ゆかりの伝統色 6.桜色

日本には古来たいせつにされてきた文化がたくさんあります。「色」もそのひとつ。人々は一日、あるいは一年(四季)のうちに緩やかに変容する色、すなわち自然界の色素を見て、色名を付け、歌に詠み、衣服を染めて、色の記憶をつむいできました。そうしたことは、文字に残る記録上、万葉の時代に始まったとされます。1300年前と今とでは見る景色はまるで違いますが、花びらや樹皮、葉や根、鉱物などから染め出した色は、古代の人々も現代の私たちも“同じ色”を見ているのではないでしょうか。そんな「日本の伝統色」から奈良ゆかりの色を紹介します。

桜があって本当によかった。愛と感謝を捧げたい春の色。

 

(ナラノヤエザクラ)

 

4月の足音が近づいてくると、あちこちで「今年の桜は…」とざわめきが始まります。日本で桜ほど人を動かす花は見当たりません。今年も桜の名所名木は多くの花見客でにぎわいそうです。

 

桜色は「桜の花のほんのりと色づいた淡い紅色」とされます。日本に桜は600種以上あり、花の色も花びらのデザインも多種多様です。どの桜の花が桜色なのでしょうか。推理していきます。

 

奈良時代、愛でられたのは桜より梅の花でした。『万葉集』にも梅の花の方が多く詠まれました。その後、平安遷都を成した桓武天皇が御所の庭に元々あった梅に代えて、奈良吉野から取り寄せた桜を植えました。花といえば桜をさすようになったのはこの頃からのようです。

 

古今、吉野の山々を染め上げる桜は日本固有種の山桜(シロヤマザクラなど)です。桓武天皇が“吉野から取り寄せた桜”は、山桜だったはずです。今でこそ、ソメイヨシノが桜の代名詞のように言われていますが、ソメイヨシノは江戸時代後期に品種改良で生まれた桜です。そうであるなら、「桜色=山桜の花の色」と言って間違いなさそうです。

 

(ヤマザクラ)

 

壮観な並木。凛々しく咲き誇る一本の桜。春の陽光が透ける一輪。ふわりふわりと舞う花びら。皆さん一人ひとりに好みはあるでしょうが、今春見ることができた桜の色をたいせつに記憶しておきたいです。

 

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